「あん? まあアイツはアレだ、真面目だけが取り柄だから。あとはヅラくらいか。は? 腕も立つ? あーそれもそうだけど、でもあん時ゃそういう奴しか居なかったろ。判断出来ねェよ」
「あァ? いきなり来て何でまたあんなムカつく面ァ思い出すようなこと言いやがる。は? 取り柄? そらァてめェ、真面目さだけだろうが。他に奴の何があんだよ。剣? あー、出来るには出来るんだろうが、並より頭一個ってとこだな。俺ほどじゃねェ。まあアレだ、バカみてェなクソ真面目っつったらもうアレの代名詞だろうさ」
「ってかアイツは真面目って言うよりバカだよね、バカ。電波だし。どうしようもねーよもう。それでもさあ、昔はもっと普通だったんだよ。いや真面目なとこは昔からだけど。でもまだその真面目さがマシな方向向いてたっていうか?」
「まあなんだ、奴はバカだ。真面目と言うよりかは今じゃバカの領域だな。天然って言うにも電波すぎるただのバカだ。昔はもう少し違う方に真面目だったがな、どこで間違ったんだか。あ? 俺には言われたくない? 斬るぞてめェ」
「はい? あー、言われてみればあのバカ加減はあの人にちょっと似てるかも。ちょっとね。ちょっとだけね。あの人あそこまでバカじゃなかったから。電波でもなかったから。電波っつーより天然だったから」
「あの人に? アレが? おい余程斬られてェみてェだな。似てるわけねェよ。いいか、あの人はそんなんじゃねェ。(中略)ってわけだ。あ? まだ質問? もういいだろこれで。これ以上あのクソうぜェ面思い出させんな、ついでにてめェの面もうぜェからさっさと失せろ」
「はあ? アイツはもう中二としか言えねェだろ。黒い獣がーとか言っちゃってさ。世界ブッ壊すとか言っちゃってさ。ていうかお前こんなとこ居ていいの? あのこえー姉ちゃんいいの? あ、そう」
「あやつは昔っから強情が取り柄だな。取り柄というか短所というか、だが。ん? それは違う? 違わないぞ。長所は短所、短所は長所なりと言うではないか」
「要するにバカだよね、もうただのバカだよね。傍迷惑な中二。もっかい人生初めからやり直せってかね。俺もいい迷惑だよいやマジで。だってなんか今も邪魔だからって春雨だっけ? そんな宇宙海賊とかと手ェ組んだみたいだし。海賊王でも目指すつもりですかアイツは」
「強情と言えば、あの人も結構な強情だったな。一度言い出したことは絶対やり遂げようとしたし……ああ、虹を捕まえると言って三日くらい帰って来なかったことがある。俺たちは止めたんだがさっぱり聞かないで行ってしまったよ。帰ってきた時はとても残念そうな顔をしていてな、何て声を掛けたらいいか解らなかった」
「まァね、今でこそ中二だけどさ、アイツも昔はかわい……、……いややっぱ昔からムカつく奴だわ。アイツが可愛かった時期なんざねェわ。強情だし、居丈高だし、強情だし、バカにしてくるし、チビだし、強情だし、喧嘩に負ければびーびー泣くし、剣も俺より弱ェくせによく突っ掛かってくるし、強情だしよォ。ったくマジうぜェ、思い出したら苛々してきた。あー、ちょっとパフェ食いたいなあ。え、奢ってくれるんでしょ? ここまで付き合ったんだから奢ってくれるよね? お前ボンボンだろ? 逃げんなよオイ」
「……また来やがったのかよてめェ……失せろっつったろ。あ? 次は奴だァ? ふざけんな誰があんな白毛玉のことを喋っかよ。は? よっぽど好きィ? オイ気色悪ィこと言ってんじゃねェよ吐きそうになったじゃねェか」
「ああ、あやつか。あやつを初めて見た時のことはよく覚えてるぞ。あの人が嬉しそうに紹介してたし、その容姿も衝撃的だったからな。鬼の子と大人たちが噂していたのを耳にしてたせいもあって、尚更驚いた。というか貴様、間も置かずに来るとは暇なのか? は? ……俺に言われたくないとは心外だな」
「あァ、出逢ったその日に喧嘩したな。ハナから気に食わねェ野郎だった。のくせに腕っ節はバカみてェに強ェから誰も歯が立たねえしよォ……くそ、アイツあの人にしょっちゅう抱き上げられてたんだぞ、許せねェ」
「あやつはよくあの人と一緒に居たな。授業が終わってみんなで遊んでいる時も、一人輪を離れてあの人の隣にくっついてぼんやりしてたぞ。は? 何を考えてたかなんぞ知るはずがなかろう。まあ、そういう掴めないところはあの人に似てたと言えば似てたな」
「あいつァとにっかくバカみてェにアホみてェに強かった。剣は勿論、喧嘩で勝てた奴さえいなかった。あの人と本気で打ち合える唯一だった。ま、あの人のが強かったがな。認めたかねェし悔しいが、アイツが強ェことはひっくり返しようのねェこった。クク、今はどうだか知れねェが、まァそれでも並の浪士にゃ太刀打ち出来まいよ」
「あと、あやつの甘味好きもきっとあの人譲りだ。あの人は辛いものが極端に苦手で、いつも饅頭だ何だと買ってきては二人で縁側に並んで食べてたしなあ。今思えばあの人も糖尿寸前……いやあの人に限ってそれはない、ないな、ない。……ん? どうしたエリザベス。なに、真選組が? ……ハァ。仕方ない、逃げるぞ。あ、幾松殿ー、今回代金はこやつが払うので宜しく頼む! ではな、さーらばー!」
「……え? いや、俺自身をそう思ったことはないな。というか似てるとかありえんだろう。どれほど素晴らしい人か貴様知ってるのか?」
「俺が? あの人に似てる? てめェ恐れ多いことほざくんじゃねェよマジでその頭ごと叩っ斬んぞ」
「取り敢えず、俺があの人に似てるとかありえねえから。俺にないものしかあの人になかったから」
「アッハッハッ、おんしやっぱり面白い奴じゃのう!」
「「「黙れバカモジャ」」」
「アッハッハッ、泣いていい?」
***
「アッハッハッ、アイツらほんに愉快じゃあ! あんたの教え子はみんな、あんたの性格ばちゃあんと受け継いじゅうの、吉田さん」
(ふふふ、そんなことありませんよ坂本君)
「なァに言っとるがか、あんだけそれぞれそっくりなんに」
「……。頭、おんし誰と話しちゅうがよ」
「吉田さんじゃ。あ、おんしにゃ見えんかの」
(まあ私は幽霊ですからねえ、俗に言う。……さて、と)
「ん、もう行くんかや?」
(ええ。お盆だからこっちに来ましたが、いいもの見られてよかったです)
「ほうか。ならまた来年も来たらええがじゃ」
(ええ、是非。それでは坂本君、あの子たちを宜しくお願いしますね)
「おお。またの」