16. 衝動的抱擁/万事屋
テレビで、一家心中の事件が報道されていた。昼下がり、眠たい午後だった。アナウンサーが悲痛な表情で事件のあらましを語っていたが、どうにも耳に入ってこない。
(心中、ねェ)
どうして子供まで連れて逝こうとするのか。施設に預けるなり親戚に頼むなりして、死ぬなら一人で死ねばいい、というのが銀時の持論だった。子供はたくましい。親がいなくても何とか生きていける生き物だ。自分がそうだったのだから。
しかしどうしてか、最近は子供を巻き込んで死のうとする親の気持ちが解らないでもないのだ。それはきっと、今こうしてだらだらと一緒にテレビを見ている二人がいるからだろう。
なんで、子供まで心中させようとするんすかね、自分が死にたいだけのくせに。そう新八が呟いて、さあ、わかんないアル、と神楽が返す。かつての自分と同じことをいう子供たちに、銀時は目を細めた。
さみしいんじゃねェの、と半ば独り言のように漏らせば、ぱっと振り返る茶と青の瞳。どうして、と目で問うてくる二人は、しかし何も言わずに真っ直ぐ銀時を見つめた。
銀ちゃん、さみしいアルか。ややあって訊ねてきた神楽に何も言えずに固まると、さみしいんだネ、と神楽は立ち上がった。その向かいの新八も神楽に続いて立ち上がる。なんだなんだと目を白黒させる銀時の両脇に立って、二人は、ぎゅうと思い切り抱き着いた。
銀ちゃん大丈夫ヨ、銀ちゃんが死ぬとき、一緒に死んではあげられないけど、最期まで一緒にいてあげるから。それで、アンタが死んだあとも思いっ切り笑って生きてやりますから、見ててくださいよ、銀さん。
二人の言葉は唐突で、咄嗟に返せたのは勝手に死なせてんじゃねーよバカヤローの一言だけだった。それでもその声が震えていたことは誤魔化せない。自分はどうやってもこの二人には勝てないのだと改めて銀時は知った。
二人の背中に手を伸ばす。いつか、自分の最期が来たとき、この子供たちは傍にいてくれるという。そのときに、地獄の門まで共に歩いて行ってほしいと願って、実際それが叶ったら安心してしまうだろう自分が想像できて、もう笑うしかなかった。
(とんだ傲慢だ。……ひとのことを笑えたもんじゃねーな)
どうか、この手がこの子らを殺めないように。そう願いながら、銀時は二つのぬくもりを抱き締めて目を伏せた。