あなたは
母さんみたいに果敢で
父さんみたいに優しくて
天使みたいに勇敢で
悪魔みたいにかわいくて
神さまみたいに残酷だ
祝福のように呪い
呪いのように祝福し
薔薇の棘のようにうつくしく嫉妬し
ユリの花のように醜く笑い
晴れ渡る夏の空のように乾いていて
しめやかに世界を閉ざす冬の雪のように静寂を守る
きっとその眼に湛える海は
世界の果てと同じ色を宿しているのだろう
そしてその心臓は音を刻まず
ただただ時をやわらかく殺すのだろう
そう、だから
僕の鼻をかわいらしくつつく指を
僕の足をいとおしげに蹴飛ばす爪先を
僕の頭をしとやかに撫でるてのひらを
僕の首筋をそっとくすぐる髪を
僕の世界を包み込む腕を
僕は確かに憎んでいた
あなたは
僕の宇宙だったのです
僕の宇宙だったのです